★星の家から 4 「これから先も」 斎藤 栞 星の家だよりNO36より

 

 

 1月からホーム長になりました。未熟ではありますが、皆さんと一緒に頑張っていけたらと思っておりますのでこれからよろしくお願いいたします。

 

 スタッフになって8年。この8年でたくさん子どもたちと出会いました。あんな子もいたな、こんな子もいたな…と思い返しながらたよりの原稿を書いています。いろいろ思い返す中で心温まるエピソードがありました。

 

かれこれ6年ぐらいの付き合いになるAさん。高校卒業を機に児童養護施設を出て寮がある専門学校へ進学するも続かず18歳の終わりに星の家へ。なかなか仕事を始めずマイペースに仕事探しをする日々。仕事を始めても自分で稼いだお金は好きに使いたいとお金を手にすると帰って来ない、ホーム長(星さん)と給料の話もしない、働く力はあるのに貯金もしない…そんな生活をずっと続けていたAさん。彼女がどんなに反抗的な態度でも星さんはいつも付かず離れず、本当にやりたい事に目を向け「自分で決める」まで待っていたように思えました。彼女がやりたかった仕事はホテルの仕事。そんな彼女がやっぱりホテルの仕事がしたいと頼る人が誰もいない場所で仕事をすると決め一人沖縄へ。あんなに自分のお金を管理されるのが嫌だった彼女がこの時ばかりは通帳を星の家に預けていきました。この日から今もお金の管理は続いています。

コロナの影響で仕事がなくなってしまい一時的に星の家に帰ってきましたが、ホテル側から声をかけてもらい○○県に戻ることができて3年が経ちます。コロナが少し落ち着いてきた頃、久しぶりに栃木に帰ってきました。連れて行ってほしい所があると彼女とある場所へ。そこは彼女のお父さんが住んでいるかもしれないアパートでした。自分で戸籍から調べて分かった父の居場所。アパートを見るだけと思っていた彼女でしたが、お父さんっぽい人を見かけ部屋の前まで行き躊躇しながらもピンポンを押しました。中から出てきた男性は私たちを見てアパート探しをしていると思ったのか、空き部屋の数やゴミの出し方について話し始めました。彼女は黙って聞いていましたが最後に「どのくらいここに住んでいますか?」と質問。名乗ることはせずそのまま帰りました。名乗らなくてよかったのか聞くと、「いい。長く住んでいるみたいだしたぶんお父さん。ずっと会ってなくてよく覚えてないけど私と似ている気がする。」と答えた彼女の顔がどこかスッキリしているように見えました。帰りの車内の他愛もない会話の中で、「だって星の家は実家だもん」と言った彼女。その言葉を聞いたとき、すごく胸が熱くなりました。きっと彼女の心の中に「星の家」があるから一歩踏み出して確かめに行けたんだと思います。その後も何度か「実家」に帰ってきてはたっぷり甘えてまた沖縄へ。

星の家に居た時よりも出てからの方が濃いやりとりばかりです。そしてずっと関係は続いていきます。そんな彼女と私の今の悩みは「いつまでお金の管理をするか」です。お互いにそろそろ大丈夫かなという思いはありますが…なかなか一歩踏み出せず。ほっこりエピソードだけでなくこういった悩みがあるのも現実です。星さんが彼女に対して、“付かず離れず” だったように少し広い気持ちでこれから先も見守りたいなと思います。